相続財産の中で大きな割合を占めるのが不動産です。国税庁の統計によると、相続財産全体に占める不動産の割合は約4割にのぼります。しかし、いざ不動産を相続すると「何から手をつければいいのかわからない」「売却すべきか持ち続けるべきか判断がつかない」という声を多くいただきます。本記事では、不動産を相続した際にまず行うべき手続きと、その後の選択肢について税理士の視点から解説します。
まず行うべき手続き:相続登記(名義変更)
不動産を相続したら、最初に行うべきは相続登記(名義変更)です。相続登記とは、不動産の登記簿上の所有者を被相続人(亡くなった方)から相続人に変更する手続きのことです。
相続登記の義務化について
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければなりません。正当な理由なく期限内に申請しない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
なお、2024年4月1日より前に相続が発生している不動産についても、2027年3月31日までに登記を行う必要がありますので、未登記のまま放置している不動産がある方は早めの対応をお勧めします。
相続登記に必要な書類
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書(法定相続分と異なる分割を行う場合)
- 不動産の固定資産評価証明書
- 登記申請書
相続登記の手続きは司法書士に依頼するのが一般的です。当事務所では提携の司法書士と連携してワンストップで対応が可能です。
相続した不動産の3つの選択肢
相続登記が完了したら、次に考えるべきは相続した不動産をどうするかです。大きく分けて3つの選択肢があります。
選択肢1:自分で住む・使う
相続した不動産に自分で住む、あるいは事業用として使用するケースです。
- 小規模宅地等の特例が適用できれば、土地の評価額を最大80%減額可能
- 固定資産税や修繕費などの維持費が発生する
- 老朽化している場合はリフォーム費用も検討が必要
特に被相続人と同居していた親族が自宅を相続する場合は、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)により土地の評価額を330平方メートルまで80%減額できる可能性があります。この特例の適用を受けるには、相続税の申告期限まで居住し続けることなどの要件があります。
選択肢2:売却する
相続した不動産を売却して現金化する方法です。相続人が複数いる場合は、売却代金を分割することで公平な遺産分割が実現しやすくなります。
売却時の税金のポイント
- 売却益(譲渡所得)に対して所得税・住民税が課税される
- 取得費は被相続人が取得した際の金額を引き継ぐ(取得費加算の特例あり)
- 所有期間は被相続人の取得日から通算して判定する(長期・短期の区分)
- 相続税の申告期限から3年以内の売却なら「取得費加算の特例」が使える
取得費加算の特例とは、相続税額のうち一定額を譲渡所得の取得費に加算できる制度です。これにより売却益が圧縮され、譲渡所得税を軽減できます。この特例は相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却した場合に適用されるため、売却を検討している方は時期にも注意が必要です。
空き家の3,000万円特別控除
被相続人が一人で住んでいた家屋(空き家)とその敷地を相続し、一定の要件を満たして売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。主な要件は以下のとおりです。
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋であること
- 相続の開始直前に被相続人が一人で居住していたこと
- 相続から売却まで空き家のまま(事業・貸付・居住に使用していないこと)
- 売却代金が1億円以下であること
- 家屋を解体して更地にするか、耐震リフォームを行って売却すること
- 相続日から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
選択肢3:賃貸に出して活用する
相続した不動産を賃貸物件として活用し、家賃収入を得る方法です。
- 毎月の家賃収入(不動産所得)が得られる
- 不動産所得に対して所得税・住民税が課税される
- 管理費・修繕費・固定資産税・減価償却費などを経費として計上可能
- 空室リスクや入居者トラブルなどのリスクがある
- 管理会社への委託も検討すべき
なお、相続した不動産が既に賃貸物件(アパート・マンションなど)である場合は、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)により土地の評価額を200平方メートルまで50%減額できる可能性があります。
判断のポイント:何を基準に選ぶべきか
不動産を「持ち続ける」か「売却する」かの判断は、以下のポイントを総合的に検討して決めることをお勧めします。
- 相続人が実際に住む予定があるか
- 不動産の立地・築年数・市場価値はどうか
- 維持費(固定資産税、管理費、修繕費)の負担は問題ないか
- 賃貸需要が見込めるエリアかどうか
- 相続人間で意見が一致しているか
- 相続税の納税資金は確保できているか
- 将来の二次相続まで見据えた場合にどちらが有利か
特に相続税の納税資金が不足している場合は、不動産の売却を視野に入れる必要があります。また、相続人が複数いる場合は、不動産をそのまま共有名義にすると将来的にトラブルの原因になりやすいため、できるだけ遺産分割の段階で方針を決めておくことが重要です。
不動産相続で注意すべき税金の一覧
不動産の相続に関連して発生する主な税金を整理しておきましょう。
- 相続税:不動産を含む遺産総額が基礎控除を超える場合に課税
- 登録免許税:相続登記の際に不動産の固定資産税評価額の0.4%が課税
- 譲渡所得税:売却時に売却益が出た場合に課税(所有期間5年超なら約20%、5年以下なら約39%)
- 固定資産税:不動産を所有している限り毎年課税
- 不動産所得に対する所得税:賃貸に出した場合の家賃収入に対して課税
まとめ
不動産の相続は、相続登記の義務化もあり、放置するわけにはいきません。まずは名義変更を確実に行い、そのうえで自己利用・売却・賃貸活用のいずれが最適かを慎重に検討しましょう。判断にあたっては、相続税だけでなく譲渡所得税や固定資産税、将来の二次相続まで含めたトータルの税負担を考慮することが大切です。
当事務所の代表税理士は自身も賃貸経営を行っており、不動産の相続税評価から売却・活用のアドバイスまで「オーナー目線」でサポートいたします。不動産の相続でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。